介護してくれた人に多く残したい・事業承継がある方に遺言書が必要な理由
「ずっと介護をしてくれた長女に、ほかの子よりも多く残してあげたい」「事業を継いでくれる長男に、会社の財産を集めて渡したい」――こうした想いを持つ方は多くいらっしゃいます。しかし、遺言書がなければ、こうした意思は法律的に実現されません。法定相続分に従って「全員に平等に」分けることになってしまいます。今回は、特定の相続人を優遇したい場合に遺言書が果たす役割を解説します。
「平等に分ける」が必ずしも「公平」ではない
法定相続分では、子ども全員が同じ割合で相続します。しかし実際の家族の中では、親の介護を一人で担ってきた子、同居して家族の世話をしてきた子、離れた場所に住んでほとんど関わってこなかった子、それぞれ事情が異なります。
「介護をしてくれた子に少し多く」という親の気持ちはごく自然なものですが、遺言書がなければこの想いを法律的に実現する手段がありません。遺産分割協議で「私が介護したから多くもらうべき」と主張することは可能ですが(寄与分の主張)、全員の合意が得られなければ認められません。
遺言書があれば法定相続分と異なる分け方が可能です
遺言書には、法定相続分と異なる割合で財産を分けることを定める効力があります。例えば、子どもが3人いる場合、法定相続分は各3分の1ずつですが、「長女に2分の1、長男と次男に各4分の1ずつ」と定めることも可能です。
また、特定の財産を特定の人に「相続させる」または「遺贈する」と具体的に指定することもできます。「自宅と事業用資産は長男に相続させる」「預貯金のうち〇〇万円は介護に尽くしてくれた長女に相続させる」といった形です。遺言書があれば、これらは相続人全員の合意なしに実現できます。
遺留分への配慮が「円満」のカギ
ただし、完全に自由に分け方を決められるわけではありません。相続人には「遺留分」(法律で保障された最低限の取り分)があり、これを下回る遺言は後から遺留分侵害額請求を受ける可能性があります。
例えば、子どもが3人いる場合の遺留分は、各自の法定相続分(3分の1)の半分、つまり6分の1です。長女に多く残す場合でも、ほかの子の遺留分(それぞれ6分の1)を下回らないように設計することが、後のトラブルを防ぐポイントです。
遺留分ぎりぎりの設計はリスクが残るため、できるだけ遺留分を上回る形で、「なぜこの割合にしたか」という理由も付言事項(遺言書に添えるメッセージ)として書き添えることをおすすめします。
事業承継の場面でも遺言書は重要です
個人事業主や中小企業経営者の方にとって、事業用財産(店舗・設備・在庫・自社株など)の承継は特に重要な問題です。事業承継者以外の相続人に事業用財産が分散してしまうと、事業の継続が困難になることがあります。
遺言書で「事業用資産・自社株はすべて後継者に相続させる」と定めておくことで、事業の一体性を守ることができます。その際、ほかの相続人への遺留分対策として、生命保険の活用や他の財産での調整も合わせて検討すると効果的です。
「付言事項」で想いを伝えましょう
特定の相続人を優遇する遺言書を作成する場合、ほかの相続人が感情的に反発するリスクがあります。こうした場合に効果的なのが「付言事項」です。「長女には長年にわたって介護に尽くしてくれたことへの感謝として、少し多く残したい」といった言葉を添えることで、遺言者の真意が伝わり、ほかの相続人も受け入れやすくなります。
法的な効力はありませんが、家族の気持ちを和らげる力は確かにあります。遺言書は「財産の分配を決める書類」であると同時に、「家族への最後の手紙」でもあります。
まとめ
介護に尽くしてくれた方に多く残したい、事業を継ぐ方に財産を集中させたいというご希望は、遺言書があってこそ実現できます。ただし、遺留分への配慮と付言事項による説明が、円満な相続のカギです。
当事務所では、ご家族の状況と財産の内容をもとに、遺留分に配慮しながら想いを実現できる遺言書の文案を作成いたします。「こんな分け方はできる?」という疑問の段階でも、ぜひお気軽にご相談ください。
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