相続人以外に財産を渡したい方へ――「遺贈」を活用した遺言書の作り方
「お世話になった友人に財産を残したい」「支援してきたNPOに寄付したい」「内縁のパートナーに自宅を渡したい」――こうした希望を持つ方は少なくありません。しかし、相続では財産を受け取れるのは原則として「法律で定められた相続人」だけです。相続人以外の方や団体に財産を渡すためには、「遺贈(いぞう)」という制度を使った遺言書の作成が必要です。今回は遺贈の仕組みと注意点をやさしく解説します。
遺贈とは何か
遺贈とは、遺言書によって財産を特定の人や団体に無償で譲ることです。相続(法定相続人への引き継ぎ)とは異なり、相続人でない方にも財産を渡すことができます。
遺贈を受ける人を「受遺者(じゅいしゃ)」といい、個人でも法人でも、NPO・社会福祉法人・学校法人などの団体でも受遺者になれます。相続人(配偶者・子・親・兄弟姉妹)に遺贈することも可能で、その場合は相続と同じ効果を持ちます。
遺贈の2つの種類
特定遺贈
「〇〇銀行△△支店の普通預金口座(口座番号〇〇〇〇)をAさんに遺贈する」のように、特定の財産を指定して渡す方法です。受遺者は指定された財産だけを受け取り、亡くなった方の借金などは引き継ぎません。また、受遺者は遺贈の放棄を遺言者の死後いつでも行うことができます(相続人への催告も可能)。
包括遺贈
「全財産の3分の1をBさんに遺贈する」のように、財産の割合を指定して渡す方法です。特定遺贈と異なり、プラスの財産だけでなく借金などのマイナスの財産もその割合に応じて引き継ぐことになります。また、包括遺贈を受けた方(包括受遺者)は相続人と同様の地位を持つため、遺産分割協議への参加が必要になる場合があります。借金がある場合は特に注意が必要です。
相続人以外への遺贈を検討する場合は、借金の引き継ぎリスクが少ない「特定遺贈」を選ぶケースが一般的です。
遺贈と相続の違い:手続き・税金面でのポイント
相続税の2割加算
相続人以外の方への遺贈には、通常の相続税に加えて20%が加算される「2割加算」のルールが適用されます。例えば、本来100万円の相続税がかかる場合、受遺者は120万円を納める必要があります(ただし、一親等の血族と配偶者は2割加算の対象外)。
不動産の遺贈は登録免許税が高くなる
不動産を相続する場合の登録免許税は固定資産税評価額の0.4%ですが、相続人以外への遺贈の場合は2.0%(相続人への遺贈は0.4%のままです)になります。不動産を相続人以外に遺贈する場合は、この点も考慮してご計画ください。
遺言執行者の指定が特に重要
遺贈の手続きを円滑に進めるためには、遺言執行者の指定が欠かせません。特に受遺者が相続人でない場合、相続人の協力を得ながら手続きを進めることになりますが、遺言執行者がいれば相続人の意向に左右されずに手続きを進めることができます。信頼できる行政書士・司法書士などの専門家を遺言執行者に指定しておくと安心です。
遺留分への注意
遺言書で第三者に遺贈する場合、相続人の遺留分(法律で保障された最低限の取り分)を侵害すると、後から遺留分侵害額請求を受ける可能性があります。例えば、すべての財産を内縁パートナーに遺贈すると書いた場合、子どもがいれば子どもからの請求が起こりえます。
遺贈の設計にあたっては、相続人の遺留分を踏まえた内容にすることが、後のトラブルを防ぐポイントです。専門家に相談しながら、現実的なバランスを取った遺言書を作成しましょう。
団体への遺贈寄付を検討している方へ
近年、NPOや社会福祉法人、大学などへの遺贈寄付(いぞうきふ)が注目されています。生前に支援してきた団体や社会貢献活動に、亡くなった後も財産を役立ててもらいたいという方が増えています。
遺贈寄付を行う際は、必ず事前に受け取り先の団体に意向を伝え、受け入れが可能かどうかを確認しておきましょう。団体によっては不動産の受け入れが難しい場合や、受け入れ条件がある場合もあります。また、認定NPO法人などへの遺贈は、相続税の非課税措置が受けられる場合もあるため、税理士への相談もあわせてご検討ください。
遺贈に適した遺言書の形式
遺贈を含む遺言書は、公正証書遺言での作成をおすすめします。遺贈の手続きは相続人以外の方が関与するため、遺言書の内容をめぐって争いが生じるリスクが相続だけの場合より高くなります。公正証書遺言は公証人が作成するため形式上の不備がなく、原本が公証役場に保管されるため改ざんの心配もありません。遺言の内容を確実に実現するためにも、公正証書遺言が最適です。
まとめ
遺贈は、相続人以外の方や団体に財産を渡せる唯一の法的手段です。内縁パートナー、お世話になった友人、支援してきた団体など、法定相続人以外への想いを実現するためには、遺言書(遺贈)の作成が不可欠です。ただし、相続税の2割加算・不動産の登録免許税・遺留分への配慮など、通常の相続とは異なる注意点がいくつかありますので、専門家のサポートのもとで進めることをおすすめします。
当事務所では、遺贈を含む遺言書の文案作成から公正証書遺言の作成サポート、遺言執行者への就任まで幅広くお手伝いしています。「この人(この団体)に財産を渡したい」というご希望をお持ちの方は、ぜひお気軽にご相談ください。
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